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上田城の戦い ― 政宗総受けMIX ―
◆真田信幸と伊達政宗
「解せぬわ。何故わしが、外から攻めねばならぬのじゃ。」
「政宗ぇ、そういうなよ。昌信殿の策なんだからさ。」
「すみませぬ、政宗殿。」
「信幸が謝ることないぜ、ちょっとご機嫌ナナメなだけだ。」
上田城で、戦を始める合図の声が上がった。
兵たちの怒号が聞こえてくる。
風にのって耳に届く、その喧騒は政宗を苛立たせた。
「えぇい!合図はまだかっ!!」
「苛立つなよ、政宗。」
宥めるような孫市の様子に、信幸は苦笑を漏らした。
(このような方が傍にいたら、退屈はせぬだろうな。
孫市殿がうらやましい。幸村も、真、良い友をもったものだ。)
この後、上田城の戦いで徳川家に認められ、
真田信幸は、伊達政宗を妻に迎えたという。
「ちょっと待てぃ!!!」
「政宗殿、終生幸せに致します。」
「兄上、わたしも納得しかねます!!政宗殿は、わたしの妻になる方です!!!!」
「貴様等兄弟、頭が腐っておるわっ!!!!」
沼田城の戦いの台詞はきっとこうなっていたに違いない。
昌 : 「どれ、可愛い嫁と孫の顔を見に来ただけじゃ。
そこを通してくれぬかな。」
政 : 「夫、信幸の許しなく、ここを通すわけにはゆかぬ!
いかな敬愛する義父上と言えど。」
昌 : 「信幸も、良い嫁御を持ったものだ」
幸 : 「ちっとも良くありません!わたしはこの戦で、
わたしの妻になるはずだった政宗殿を取り返します!!」
政 : 「幸村!何故戦いあわねばならぬのじゃ!
兄弟じゃろう?!」
幸 : 「あなたを得るためならば、わたしは何を敵に回してもいとわない!!」
もう稲姫完全スルー。
◆北条氏康と伊達政宗
「戦の仕方を教えてやるぜ、小僧ども」
「氏康がごとき年寄りに、やられるはずもないわっ!」
氏康に向かって猛然と向かっていく政宗。
その姿を認めて、氏康はにやり、と口角をあげた。
「へぇ、言うじゃねーか小僧。
その年寄りに、良いように啼かされてたのは、何時だったかねぇ?」
「…なっ?!」
ニヤニヤと笑いながら、氏康の言葉に鈍った、
政宗の刀の切っ先を易々とかわす。
余裕の笑みで、煙管を指先でくるくると回し、自らの刀の柄で、叩いて灰を落とす。
カン!と小気味良い音が、その場の空気を破った。
「今の…今の言葉は本当かーーーー!!!!」
鬼の形相で走って来た幸村に、氏康が若干引く。
刀を構えるまでも無く、無双奥義を食らい、その場に倒れた。
登場からわずか十数秒。
まさに瞬殺された氏康。もう逃げ台詞すら言うことも叶わず、強制退場させられた。
氏康が消えたあと、幸村は政宗に振り返り、その肩を掴み、激しく揺さぶった。
「政宗殿!真ですかっ!!今の氏康殿の言葉は!」
「なっ…幸村っ!お前…お前は稲と戦っているはずじゃ…」
「兼続殿と慶次殿にお任せしてきました!
それよりも、氏康殿の言葉の意味を、ちゃんと説明してください!!」
「いや…その…氏康の老いぼれが言っていた事はじゃな…」
「私以外にも、そなたの肌に触れたというのですかっ!」
傍で聞いていた孫市はうんざり、と顔を顰める。
困り果てた政宗は、幸村の力強い瞳と問いに、しどろもどろ、上手く言葉が出てこない。
視線だけで孫市に助けを求めるが、孫市も政宗に目配せするだけ。
上田城城下と、氏康が現れた拠点と、一体どれだけ離れているのか。
それを一瞬で飛んできてしまう政宗への愛。というか、執念。
孫市も、流石に政宗を助けることは無理だった。
「政宗ぇ…もう、いい加減諦めて、お前、幸村のモンになれよ。」
「孫市!他人事だと思っておるな…!」
「だって、お前が悪いんだぜぇ政宗。
謙信公の手伝い、とか言って、小田原城にまでくっついていっちまって、
逆に謙信公や氏康に惚れ込んで無防備に近づいた挙句、食われちまうんだからなー。」
「それは、真ですか孫市殿っ!!」
「まー、こいつ、いろいろと家族愛には恵まれなかったから。
親父ってもんに憧れてる上に、弱いのさ。
だから、もう誰かのもんになっちまえば、操立てとか考えて、そう無防備に近づかないだろ?」
幸村にぐいぐい抱きしめられ、自分の頭ひとつ分、上でかわされる会話に、
政宗は愚の音も出ない。
確かに、孫市の言うとおり、父親というものに弱い節がある。
だから、付け込まれて、氏康の良いようにされてしまった。
その上この戦いの前には、幸村に押しに押されて断りきることが出来ず、
拒否も否定も出来ないまま肌を許してしまった。
確かに、孫市の言う事も一理ある。
「…わしが、悪いのじゃな…。」
「政宗?」
「政宗殿?」
「わしが、警戒心も抱かず、ほいほいと懐いてしまうからいけないんじゃ!!」
ほろほろと泣き出してしまった政宗に、
幸村も孫市もどうして良いか分からず慌てふためいた。
「いや、そういう意味じゃ…なぁ、幸村?」
「そうですよ政宗殿!!わたしは、政宗殿が好きなだけで…っ!」
「違わぬ!おぬし等はわしの事を尻軽じゃと言うておるではないかっ」
じたばたと幸村の腕の中、暴れ出した政宗に、幸村と孫市は手を焼いた。
その頃、上田城の城下では――。
「兼続、俺ぁ政宗のことも、幸村のことも嫌いじゃないんだけどよぉ
まー…アレだ。政宗も罪な男だよなぁ…」
「フン。あんな山犬のどこが良いんだ。」
「そうかぁ?俺、政宗の事好きだぜ?政宗なら抱ける。」
「なんの宣言をしておるのだ慶次!不義だぞっ!!」
「はっはぁ!お前だってまんざらでもないんだろー、兼続。」
無言の兼続に、慶次はニヤリ、と口角を上げた。
幸村はじめ、五人の若者によって、上田城は無事に守られた。
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