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日々の徒然や妄想など
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久しぶりに幸政です。

拙い当サイトの幸政が好きだと熱く語ってくださった方に触発(?)され。
企画にお申し込みいただいた方なのですが、
(…まだ受付確認のメールだしてませんでした…!!迂闊!)
迸るパッションに応えたくなるのが人情!
ということで、その方に捧げたいと思います。

捧げられても迷惑、とかいう、そいういう気遣いを、雲は知りません。
(↑断言しちゃったYO!)

大丈夫、という方は「つづき」よりどうぞ。


*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*

秘するが花?


戦が起こる。己は、自らの信念のために戦う。
日の本一と称される兵になるために。
けれど、果たしてそれだけなのだろうか―――。

幸村は、ふと顔を上げ、視線の先に映る小柄な姿をその視界に納めた。

武田軍では、武田信玄を『お屋形様』と慕い、彼のために槍を振るった。
信玄亡き後は、三成に誘われるがまま豊臣に付いた。
誰かの信念や生き様に触発されて、という訳ではなかった。
触れ合う袖もなんとやら。信玄以外はただなんとなく、縁があって供に戦ってきただけで、
自らがそうしたい、と望んだ戦は少ないように思う。

ある日、幸村が槍の手入れをしていると、直江兼続がやってきた。
彼とは知らぬ仲ではない。むしろ、友情を感じる程度の付き合いはある。
そんな彼が、唐突に幸村に問うた。

「幸村、お前の戦は見ていて少々危なっかしい。
もう少し、周囲を気にして戦えぬのか?」
「…危なっかしい…ですか…」

告げられる言葉に、幸村は疑問符を浮かべる。

「猪突猛進とでも言おうか…。なりふり構わず、自らの命すら顧みず、
敵中に攻め入る戦い方は、自分を大切にしていないように思えて、私は好きではない。」

兼続の言葉に、幸村はふと考え込んだ。

「お前には、守るものはないのか?愛しい者は居ないのか?
そのような戦い方は、お前を大切に思う者たちを傷つけることになるぞ。」
「…兼続殿…愛しいと思う方なら…居ます。」

幸村の、彼らしくなくはっきりとした返答に、兼続がゆっくりと目を見開く。
いつもであれば、『愛しい者など居ない』と困ったように返すか、
ただ黙って兼続の言う事に、耳を傾けるだけなのに。
どうしたことか、今日は少し苦しそうな表情で、少し遠くを見つめている。

その姿を見て、兼続も幸村の視線の先へと目を向ける。
そして軽く眉を顰めた。

「愛おしいと思ったところで、告げる勇気はわたしにはありません。
それに、彼の人にとって、それはとても困ることでしょうから…。
だから私は、あの人の事をただ、見つめるだけで良いのです。」
「秘するが花、と言う奴か?お前らしくもない。」

兼続は視線の先の、小柄な武将を見つめる。
ようやく、大人の中に混じっても何とか埋もれずに居るその体躯。
どう頑張ってもまだまだ、ほかの豪傑たちに及ばない。

「いつか、私はあの方の槍となりたい。あの方の夢をかなえて差し上げたい。」
「…それは、己の信念を曲げても、か?」

兼続の問いに、幸村は少し考え、それから困ったように手元のやりに目を落とした。

「…それは、分かりません。やはり、自らの信念を優先してしまうかも知れない。
それでも、私は…政宗殿のお力になりたい。」
「ならば、それを本人に伝えてやれば良いだろう。」

言うが早いか、兼続は声を張り上げて、政宗を呼ぶ。
当の政宗は、何事かと一瞬こちらを振り返るが、兼続の姿を見て眉を顰める。

「兼続殿っ!」
「なんとも表情に出やすい山犬よ。」

幸村が咎める声も聞かず、兼続は政宗に"こちらへ来い"と合図を送る。
ありありと、"厭だ"と書かれた表情ではあるものの、
兼続の隣に幸村が立ち、所在無さ気にしている様子から興味が引かれたのだろう。
そう時間も掛からず、ゆっくりと二人の前に歩を進めた。

「なんじゃ、兼続。わしになんぞ用か?」
「用が無ければ呼ぶものか。幸村が、お前に言いたいことがあるそうだ。」
「幸村が?」

幾分低い角度から、政宗は幸村を見上げた。
見る間に赤面していく幸村。

こんなはずではなかったのに。
一生、黙っておくつもりだったのに、と頭の中は目まぐるしく考えが過ぎ去る。
混乱気味の頭で、それでも何とか政宗に向き直る。

「その…わたしは…」
「うん?」

たどたどしく言葉を繋ぐ幸村を、珍しく政宗は待っていた。
兼続が政宗を呼び出したことと言い、今の幸村の様子と言い、
何か重要な事なのだろうと、思い至ったのかもしれない。

「ま…政宗殿の…槍になりたいのです。」
「構わぬぞ?」
「…え?」

あっさりと出た了承の言葉に、幸村は驚いて政宗を凝視する。
同じ年とは思えない、自分とは一回りも二回りも小柄な体が、真っ直ぐに幸村を見据えていた。

「優秀な兵は、大歓迎じゃ。」

にこり、と挑発的に笑う笑顔とは別の、柔らかな笑顔に、幸村の心拍数が上がる。

「あの…ご迷惑ではないのですか?」
「何が迷惑じゃ?」

逆に問い返されて、幸村は二の句が告げられない。

「わしを誰だと思っておるのじゃ。幸村の頼みくらいでは困らぬ。」
「随分と大きく出たな、山犬。」
「貴様は黙っておれ兼続。いちいち勘に触る奴じゃ。」

横から口を挟んだ兼続に、即座に政宗は噛み付いた。
余程反りが合わないのだろうか。

「その、政宗殿…」
「今度はなんじゃ?」
「その…私は…政宗殿の事を、お慕い申しあげておるのですが…」

先ほどあまりにも簡単に了承を貰ってしまったせいで、感覚が可笑しくなってしまったのかも知れない。
幸村は、通常であれば、絶対に聞かないようなことまで口に出してしまっていた。

「ほぉ。わしに懸想、とは。また随分と面白い奴じゃ。」
「幸村は人を見る目がない。」
「だから、貴様は黙れと言うておるじゃろう、兼続。」

ぎりっと兼続を睨みつけて黙らせると、政宗は幸村をまじまじと見上げた。
その視線に、幸村がたじたじとなってしまう。

「…幸村よ。わしに男色の気は無いが、別に、お主に思われて、困ることもない。」
「…はぁ…」

良くは分からない政宗の言葉に、幸村は少し首を傾げた。

「わしの槍になりたいのであれば、なれば良い。
わしを求いておるなら、好きなだけ求めよ。
その程度の事で、この政宗、一向に困りはせぬ。」

笑顔と供に断言され、幸村の気持ちはぱっと明るくなる。
反対に、兼続はまるで化け物でも見るような目で政宗を見ていた。

「政宗、お前まさか、純真無垢な幸村を手の内で転がすつもりでは…」
「黙れ兼続。もう貴様はどこぞと去ね!」

追い払われた兼続と、その場に残された幸村。
ちらりちらりと政宗を見る幸村は、落ち着きがない。

「どうした、幸村?」
「いえ…その…政宗殿はなぜ…わたしなどの想いを汲んでくださるのですか?」
「わしも…。お前ともっと話をしてみたいと思うておった。」

はにかむように答える政宗に、幸村は嬉しくなる。
ただ、見つめるだけだった存在が、今触れられる位置にいる。
それだけでこの上なく幸せだ。

「政宗殿…」
「今度はなんじゃ?」

幸村に寄り添い、彼の槍の手入れをのんびり眺めながら、政宗は問う。

「あの…その…ご迷惑でなければ…」
「?」
「いえ、お手を…」
「手?」

言われるまま陽に翳すように右手を上げると、その指にそっと、幸村が指を絡めた。

「ご迷惑でなければ、このまま暫く…。」
「……莫迦な男じゃな。これくらいでは困らん。そう申しておろうが。」

絡められた指を、きゅっと握りしめ、政宗はその闊達な笑顔で幸村を見上げた。

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