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いつから、どうやってこの関係が始まったのか、もう覚えてはいない。
否、思い出したくないだけなのかもしれない。
最初は冗談のつもりだったのに、あまりにも無知で無垢なキッドに、
自分を刷り込ませたいと強く望んでしまったから、と
そんな下手な理由を付けてみるが、今更遅い。
体の距離に比例して乖離していくような心の距離。
慣れた手つきでキッドの体を拓いてゆく己の手も、
どれだけひどく抱いても声一つ、涙一つこぼさないキッドの強情さにも、
とにかく今となってはキッドの所作どれをとってもソウルの胸中に
苛々とした思いを抱かせるのだ。
今日も、教室で級友達と話をしてた。
ただそれだけなのに。
ソウルには見せなくなった笑顔、声音でマカに応じるキッドに腹が立った。
移動教室で、連れ立って歩く仲間に気づかれないよう、
キッドの腕を引き、物置として使われている教室に引っ張り込んだ。
良くわからない教材らしきものや、机、今時珍しい椅子、
壊れた地球儀やら乱雑に散らばった資料、埃っぽい空気。
キッドにとってもこの空間は気に入らなかったのだろう。
ソウルの暴挙とあわせて、片眉は不機嫌そうに上げられているし、
表情も纏う雰囲気すら剣呑だ。
そして、このキッドの様子がまたソウルを苛立たせる。
掴んだままの腕を乱暴に引いて、うっすらと埃がたまっているような机にキッドを押し付けた。
キッドの唇からは、みぞおちを打ちつけたような、詰まった吐息が漏れた音がしたが、
ソウルは気にせずいつもの通り、服を、肌を暴いてゆく。
互いに無言のまま、ただ身体の熱だけが上がって、明らかに暴走していることが分かったが、
だからと言ってもう止まれるはずも無かった。
ここが死武専で、扉を隔てた向こうには廊下があり、
いつ何時誰が入ってきても可笑しくない状況で、
ソウルはキッドを抱く。
身体は反応を返しているのに、声も吐息すら乱さないように、
意識を集中しているキッドに苛立つ。
遂に我慢できず、ソウルは苛立ちそのままにキッドに問う。
「お前っ!何で俺に好きにさせる?! 嫌なんだろ、本当は!」
机にうつぶせさせ、下肢だけ露わにした状態で、
ソウルの指はキッドの体内に埋め込ませている。
慣れた身体は一瞬強張るものの、それ以上ソウルを拒むことはなかった。
心は拒むのに、身体は受け入れるのだ、目の前の彼は。
中途半端に餌付けされているようで、それが悔しい。
それならばいっそ、全てを拒否して欲しいのに。
「お前こそ…何故こんな行為を続ける?
俺を貶めたいだけなんじゃないのか?」
うつぶせられた状態から、何とかソウルに首を回してキッドは答える。
「俺が嫌いだから、気に入らないから、こんな無意味な事を続けるんだろう?」
自嘲するような笑みと共に、キッドは告げた。
ソウルに抵抗しても無駄なのだ。
それこそ始めは嫌がりもしたが、死神の適応能力はこんな時でも素晴しく、
キッドはこの体質を呪いたくなるほどだった。
1度目は痛みと衝撃の方が勝った。
けれど、2度目以降は既に身体は快楽を拾いはじめ、
キッドの意思とは関係なく体温だけが上がっていった。
体温の上昇と反比例するように、心は冷えていくのだが。
キッドの頭の中からは、初めて身体を繋ぐ前のソウルの言葉が離れない。
首筋を撫でられ、服を脱がされるという普段ありえない状況に、
ただただ驚いていると、『おもしれぇ…』と。ソウルは一言言ったのだ。
低く、甘いくせに、とても冷たい声だった。
「俺を嫌いでないなら、こんな事しないだろう?」
強姦まがいな、と続けてキッドはもう口を閉じ、ソウルから視線を外してしまった。
ソウルはキッドの言葉に虚を突かれる形となった。
そして、胸の痞えが取れたかのように、腹の底から笑いがこみ上げてきた。
「…っくくっ…なんだ…そうかよ……」
「…?」
突然笑い始めたソウルに、キッドは再び首を巡らせソウルを見やる。
「俺が、『好きだ』の一言も無くお前を抱いて、
しかも慈しむような事を一切しないから、それがお気に召さなかったってワケだ。」
「…なっ…!」
今まで微塵も表情を崩さなかったキッドの顔に、
さっと朱を引いたような赤みが点った。
「安心しろよ、嫌がらせだけで男抱けるほど、俺器用な性質じゃねーし。
ちゃんとお前が好きだぜ、キッド。」
「…っ戯けが!今更そんな言葉信じるとでも…」
「まー…最初のアレはさ、なんつーか…俺の色に染められるのかと思うと、
嬉しくてつい、な。」
「莫迦が!戯けが!!死ね!!何が『俺の色に染められる』だ!
俺は何物にも染められることはない!染まりもしない!」
ソウルの身体を押しのけるように、身体を引き剥がそうとするが、
内部にまで侵入を許してしまっている状況で、
しかもソウルの言葉に、軽くパニックを起こしているキッドでは、ほとんど抵抗にならなかった。
「悪かったよ、ちゃんと証明してやるから。」
今、この場で、と続けてそのままソウルはキッドの唇を奪う。
何度も身体を繋げてきたのに、キスをするという当たり前の行為が、確かに抜けていた。
角度を変えて何度も、無理な体勢で行われるキスに、
キッドは眩暈がし始めた。
次第にもがくことを止め、身体は弛緩してゆく。
その隙を見逃すはずも無く、ソウルの指はキッドの体内で器用に動いた。
「…っ…ふ……」
ほぼはじめて、と言っていい程、キッドの吐息が漏れる。
あぁ、こんな艶っぽい、男を煽るような息遣いをして、と頭の片隅で思うと同時に、
だがあのキッドに、こんな吐息をつかせているのが自分なのだ、と思うと
今までの苛立ちが嘘のように、とても幸せな気持ちで満たされた。
互いに、今までの行き違いは氷のように溶け、
今はただただ愛しさだけが募っていった。