ソウキド版、ハロウィン。
キッド女装有りです。お嫌いな方はスルーを。
大丈夫!という方は『つづき』よりどぞー。
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「…で、なんだってお前はそんな格好してんだよ、キッド?」
「知らんのか?今日はハロウィンだぞ。」
あぁ、それは良く知ってる。
ガキが変装して近所の家回って菓子や飴をねだる日だろう。
確か『おかしをくれないと、悪戯するぞ』って脅し文句言いながら。
「だから、オレが聞きたいのは、なんでそのハロウィンで女装してるのかって事なんだけどな。」
「…ハロウィンだからだろう?」
小首をかしげる目の前のキッドは、
大きな魔女帽子に、前髪をこめかみ辺りでゆるくピンを挿して止めた状態。
ウィッグはつけていないが、それだけでも随分と印象が変わるものだ。
そして何よりも、いつも着ている黒のスーツではなく、
黒のワンピースになっている。
首はハイネックで肩までの襟部分は白い。
中央にはおばけかぼちゃを模したブローチ。
――どうあっても、ブローチは外せないらしい。
ハイウェストで切り替えられたデザインのワンピースは
膝上丈で、キッドはそのすらりとした足を惜しげもなく晒している。
二の腕まで緩く膨らんだ袖は、肘の少し上の部分でリボンで止められ、
手首に向けてふわりと袖口が広がっていた。
はぁ、とオレは溜息を吐いて、キッドの大きな帽子のツバ部分をつまむ。
「で?ハロウィンでもオレは生憎お菓子は持ち合わせてないぜ。」
「お菓子?」
問い返してくるキッド。
どうもキッドの様子が可笑しい。
オレの知っているハロウィンとは違う何かの行事と混同してるような…。
「キッド、お前の知ってるハロウィンってなんだよ?」
「…ハロウィンとは、ケルト人の祭りで、彼らの暦では10月31日は大晦日だ。
新年前のこの日は地上をうろつく悪霊や魔女達を追い出すことができる。
悪霊や魔女たちを動物の中に閉じ込めて、精霊の世界へ追いやる祭りだな。
若者は女性に変装して町中を歩き、ご馳走を食べる日だと記憶している。」
だから、『仮装』でなくて、女装だったのか、とオレはようやく納得した。
いつもと違うところは髪形と服装だけなのに、
それだけで一種完璧すぎる女装にトンプソン姉妹が絡んでいることが容易に想像できた。
「それよりお前は何故女装せんのだ?
魔女を追い払う大切な祭りだというのに。」
少し不満そうに頬を膨らませるキッド。
「あー…えっと、とりあえず、Trick 'r Treat?」
「…なんだそれは。」
「"お菓子をくれなきゃいたずらしちゃうぞ"って意味だけど?」
「それは分かっている。なぜ菓子だ。空腹なのか?」
キッドの疑問に答えるために、オレは今もっともポピュラーな収穫祭の話をしてやる事にした。
「オレが知ってるハロウィンは、
魔女やお化けに変装して、いたずらされたくなきゃお菓子を出せってねだる収穫祭なんだよ。
で、お前今お菓子持ってるか?」
否、と答えるキッドの手を取って、
とりあえずオレはアパートの玄関に立ちっぱなしのキッドを中に引き入れた。
「じゃ、いたずら決定だな。
たまにはこういった趣向も良いっちゃ良いよな。」
腕を引かれるままキッドは玄関内に足を踏み入れる。
強くひっぱり過ぎたせいか、たたらを踏みながらよろけるように入ってきた。
「おい…ソウル、急にひっぱるな!」
先の尖った、履き慣れないブーツを履いてるからだろう。
倒れこむようにオレの腕の中にいるキッドを支えて、そのまま玄関の扉を閉めた。
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