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嗚呼、麗しの女王様。
「しつこいぞ、ソウル。」
「何でだよ、理由を言えよ、キッド。」
「だから、必要がないと言っているだろう。」
これ以上の問答は無用、とキッドはソウルの腕を振り切ってベルゼブブを取り出す。
が、させじとソウルがキッドの腕を引く。
「貴様…!危ないだろうっ?!」
「だから、お前が拒否するからだ!」
「俺が賛同する理由も、必要も無い、と何度言ったら分かるんだ?」
はぁ、と溜息をついて、キッドは諦めて出したばかりのベルゼブブを片す。
お前はスッポンか、と呟いて、ソウルに向き直った。
「俺には、お前が拒絶する意味がわからねぇ。」
「あのな、ソウル…」
どうしたものかと、こめかみを押さえ、キッドは深く深く溜息をついた。
そのキッドからの答えを待つ。
「なんだよ、キッド。」
「俺には、公衆の面前で、キスをせがむお前の神経が理解できん!」
「キッドは俺のものだって、知らしめたいんだよ!」
「戯けがっ!!」
バキっと痛そうな音を立てて、ソウルは頭を殴られた。
あまりにも強く殴られて、目の前に火花が飛ぶと同時に、
その場に蹲る。
「まったく…っ!戯けにも程があるぞ、ソウル!」
「~~~~~~ってー…」
「自業自得だ。」
「どうすりゃ良いんだよ。どうすりゃ、キスさせてくれるんだ?!」
「っ!!そこかっ!そこなのかっ!!??」
ガックリと肩を落とし、キッドはさらに深く深く溜息を吐いた。
そして、ふと思いついたように顔を上げた。
蹲るソウルに、意地悪な笑み。
「丁度良い。そのまま、靴でも舐めるか?そうすれば、考えても良い。」
非情で尊大な笑みと言葉。
けれど、抗い難い笑みと言葉。
なんの躊躇もなく、キッドの靴へと頭垂れるソウルを、キッドは驚き慌てて止めた。
「ばっ…!!馬鹿!本気にする奴があるか!!」
「なんだよっ!神様が嘘吐くのかよ!」
「~~っ…このっ…戯けがっ!」
ソウルの言葉に、半ば諦めたように、キッドはその唇へと吸い付いた。
「別に…膝を付かなくても、ましてや靴を舐めろとか、
そういう事はだな、なしにしたって、俺はお前にキスくらい…。」
「キッド…?」
突然の事に驚くソウルの視線に耐え切れず、
キッドはふいっと顔を逸らした。
そして小さく呟く。
「……キスくらい、いくらでもしてやる…。」
「キッド…!」
感激したソウルが、キッドに抱きつこうとするが、
そこはきっちりかっちりガードされた。
「だからと言って!公衆の面前でするつもりはない!!
ましてやこの場で抱擁だなどと…っ」
顔を真っ赤にして、ソウルを思い切り突き飛ばし、
キッドは今度こそ走り去った。
死武専の校庭で繰り広げられたこの光景。
既に公衆の面前で、女王様ごっこにキスまでしている事に、
キッドが気づくのは死刑台屋敷の自室に戻ってからだった。
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