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日々の徒然や妄想など
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バレンタインも近いので、
超わがまま、俺様デレデレ死神様。
毎度の事ながら、振り回され系のキッドたんです。

「つづき」よりどうぞ。


*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*

命無限に、恋せよ死神


らんらんるー♪

奇妙な鼻唄が近づいてくる。
キッドは半ば、辟易しながら溜息をついた。

エプロン姿でキッチンに立つキッドは、今とても繊細な作業をしている。
少しでも温度を間違えてしまうと、溶かしたチョコレートが固まらないのだ。

「キッドくぅ~~~~ん♪」
「…なんだい、父上。」

死神を振り返ることなく、キッドは作業に没頭する。
湯銭に掛けたチョコレートに調理用の温度計を差込み、温度とにらめっこしながら、
丁寧にテンパリングしていた。

「もうすぐバレンタインだよね☆今年もわたしにくれるよねっ☆」

弾んだ声が恨めしい。

「…もちろんだよ、父上。」

去年、バレンタインなど全く気にしていなかったキッド。
そもそも、自らは捉えられていたので、それどころではなかったのだが。
けれど、キッドからチョコレートを贈られるもの、と思い込んでいた死神の落胆と怒りは、
あと一歩で世界を滅亡させるほどだった。
後付けで、手作りをプレゼントし、何とかなったが現在があるのだが。

(…そんな、チョコレートの一つや二つで、一体なんだというのだ。)

本心を押し隠し、憮然と作業を進めるキッド。

「あのね、キッド君。こういうのは、気持ちだよ、気持ち☆
キッドが、わたしを想って準備してくれるものだったら、わたしは何でも嬉しいんだから♪」

にこにこと上機嫌の死神をようやく振り返って、キッドはへぇ、と呆れた顔をした。

「じゃ、その辺で売ってるチロルチョコでも買ってく…」
「ダメ!」
「……………」

案の定な回答に、キッドは黙った。

「キッドくんの、わたしへの愛はその程度なのかーい?!」

器用にも、仮面から涙と鼻水を垂れ流しながら、
顔を左右にブルブルと振ってキッドににじり寄る。

(想像はしていたが…分かり易いな、父上は。)

はぁ、と溜息をついて、キッドは泣きじゃくる父を宥めた。

「冗談だよ。ちゃんと、作るから。」
「…ホント?」
「あぁ、嘘はつかない。」
「みんなのとは違う、特別製のじゃなきゃ、厭だよ?
っていうか、みんなにはキッド君お手製の何かをあげちゃダメだからね!」
(何でも良いんじゃなかったんだ…)

胸中のツッコミは飲み込み、キッドは笑顔で答えた。

「あたりまえじゃないか。俺にとって、父上は特別なんだから。」
「♪♪♪」

テンションMAX。例えるならばそんな感じだろう。
死神はうきうきと踊り、くるくると回りながらキッドにまとわりつく。

「何つくってるの~??」
「ザッハトルテ。」
「やっぱり、キッド君は良くわたしを分かってるね♪」

きゃっほーと奇声を発しながら、死神はスキップしそうな勢いでキッチンを後にする。

「ザッハトルテに良く会うオレンジ・ペコがあるんだ!
ちょっくら買って来るから、待っててね~♪」
「あ、ちょっと父上!」

バレンタイン当日はまだ先だ、と。
コレは練習用なのだ、と伝えたかったが、既に死神の姿は無かった。

「…まぁ、いいか。」

どうせこのケーキも父・死神と食べるつもりだったのだ。
なんなら、マカやソウルたちも呼んでも良い、と思ったが、ここは世界の平和のために
控えたほうが良いだろう。

今、父・死神は非常に機嫌が良く、あえて逆鱗に触れることもあるまい。
キッドは作業に戻りながら、作業に没頭するよう努めた。

なんだかんだ言って、現在のキッドの性格形成には父・死神が深く関わり、
本当は、ワガママ大王である死神の性格に拍車をかけているのは、
最終的に死神の嫉妬深い、独占欲に満ちた愛情を、黙って享受している、キッドなのだ。

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