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奏
三寒四温とは良くいったものだ、と政宗は自身が点てた茶を飲みながら、
窓の外、深々と降り続ける雪を眺めていた。
すでに春を訪れる小鳥が鳴き始めているのに、
こうしてたまに、雪が降る。
溶け始めた積雪の上に降り積もるその雪は、空が晴れれば滑りやすく
非常に危険なものなのだが、こうして春先に降り積もる雪は風情がある。
「…まるで、あやつのようじゃな…」
誰もいない部屋、政宗はぽつりと呟いた。
そう、眺めている分には良い。
ただ、その後の災難と言うか、自身に降りかかる諸々を考えると頭が痛い。
「…クセが強いとでも言うのか。」
頑固かと思えば柔軟であったり、政宗が強く出れば…
(まぁほとんど、政宗が強く出るというか、基本的に天邪鬼であるため、
何につけても素直に頷くことが少ない。)
あっさりと譲ってくれたりもするのだが、後で、譲ってもらった事以上を
結局政宗が譲歩する事になってしまうのだ。
「いつもそうじゃ。」
温かくほろ苦い茶を飲み下しながら、ぶちぶちと文句を言う。
こんな時くらいしか、言えないから。
なんだかんだと、二人でいられる時間は文句を言っていないように思う。
「…わしもなかなか大人じゃ…」
うんうんと頷いて、政宗は茶碗を置いた。
この茶碗も、想い人から贈ってもらったものだ。
上薬の色や茶碗の凹凸がなかなか気に入っている。
生憎、政宗は
"好きな人からもらったものなら、何でも宝もの"という
殊勝な性格ではない。
だから、気に入ったものは使うが、そうでなければ突っ返すか、捨てていた。
思えば、茶碗だけでなく、随分と、身の回りに贈られた品々が溢れているように感じた。
煙管、煙草入れ、飾り紐、茶碗…
どれも"高価な品"とは言い難いが、趣味は悪くない。
「こうして、わしの身の回りはあやつから贈られた物で埋め尽くされていくのか…?」
呟いてから、ふっと笑みがこぼれた。
それも、悪くないかも知れない。そんな気すらする。
窓の外では相変らず雪が降っている。
雪が晴れるまでもう少し、政宗は、今は遠く離れている恋人を想い、
火鉢の火に当たりながら雪見を楽しんだ。
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