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日々の徒然や妄想など
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クリスマスが近くなってきました。
でも、この時期に大量に捕殺される鶏ではありません。

えーと…不思議系…?
よく分からないテイストですが、大丈夫な方はお進みください。
三政です。
(三政と言い張ってみます。)


*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*




わたしは、鳥だった。
翠の、小さな鳥。

自由に空を飛び、疲れたら木々の枝にとまり羽根を休めた。
空腹を感じれば木の実を食べた。
赤・紫・黄色…色とりどりの木の実はとても美味しかった。
そして、好きなときに囀り、歌を歌った。

歌うことに意味はなかった。
ただ、歌いたいと思ったときに、好きなだけ歌った。
澄んだ空気に歌がとけ込むようで気分が良くなって、
そして私はまた空を飛んだ。

ある日、大きな鳶色の鳥に襲われた。
わたしはからがら逃れ、茂みに身を隠した。
空を飛び、この危険な場所から逃れるための羽根は傷つけられて、使い物にならなかった。
茂みの中で、鳶色の大きな鳥だけでなく、他の動物達からも
狙われているのではないか、とハラハラしながら痛みに耐えた。

大きな鳥に襲われた翼は無残に羽がむしられて血が滲んでいた。
痛みと恐怖で気を失いそうだった。
もしかすると、実際は何度か気を失っていたのかも知れない。
そんな最中、土と草を踏む音が聞こえた。
もっとも野蛮な動物である人、と分かるのにそう時間は掛からなかった。

少しずつ近づいてくる音と、気配。
わたしは身構えた。
がさり、と大きな葉の擦れる音がしたかと思うと、わたしの視界は急に開けた。
高かった陽が茜に染まり、人を背後から照らしていた。
すでに朦朧としていた意識で、人の顔は良く見えない。
ただ、青かった空が茜に染まる、その長い時間、わたしはここで怯え、
痛みと戦っていたのだという事実を知った。

目の前に居るのが、大きな鳥でも、野生の動物でもなく、
もっとも野蛮な動物である事に絶望を覚えたけれど、
それも天命か、とわたしは遂に意識を手放した。


―――気がついた時、
わたしは白くてふかふかで、暖かな場所に居た。
視界一面が白くて、わたしは死んだのだ、と理解した。
けれど、それが間違いである事を知らされる。
目の前に、人がいたから。
あぁ、人の手に落ちたのか、と思ったけれど、すぐに違和感を感じて、
手放しそうになる意識を何とか繋ぐ。

わたしに触れる、人の手。
温かくて、優しくて、慈しむような触れ方。
翼は痛んだけれど、手当てをしてもらったらしく、白い何かで固定されていた。

人は怖いと聞いていたのに、
触れてくる温度はとても優しくて、ひどく心地よい。
わたしはすっかり安堵してしまい、警戒することなく今度は自らの意思で眠った。


―――次に目が覚めたとき、
わたしはやっぱり白いふかふかなものの上に居た。
わたしの仲間達が人に捕らえられた時に入れられた、
忌まわしい『檻』というものには、入れられていないようだ。
もっとも、今のわたしは怪我で空を飛ぶことは出来ないのだけれど。

少し、羽ばたいてみる。
やはり、痛くて上手く飛べない。
わたしの気配に気付いたのか、側にいた人が近づいてきた。
わたしに触れるその手はやっぱり優しくて、壊れ物を扱うよう。

「……起きたのか…痛くはないか?水は飲むか?それとも何か食べるか?」

矢継ぎ早な質問に、わたしは答える義理もなく、人の手から逃れる。
目の前に並べられた水や木の実は良いとして、虫は食べない。
差し出される前に、わたしは自分で水を舐め、木の実を食べた。
消耗した体力を補うにも、怪我を治すにも、食べなければならない。
食べている間も、わたしを撫でる手は止まらない。
不器用で、たどたどしい撫で方だったけれど、厭ではなかった。

檻のない生活。
人は、時折現れて、水と木の実を交換してくれた。
虫は一切手をつけないせいか、暫くしてわたしの目の前から消えた。
朝と夕、人は手当をしてくれた。

どうやら、わたしはふかふかな綿入れのようなものの上にいて、
ここは、人の寝室であるらしかった。
人は、仕事をここに持ち込んで、わたしに付き切りだった。
別の人がやってきて、山ほどの紙を置いていく。
そして、人が綺麗に整頓し、何か作業を施した、別の紙の山を持って出て行く。

時折わたしを見ては、恨めしそうな顔をしたけれど、
日が経てば、わたしに挨拶していくようになった。

人は、時折わたしに話しかける。
わたしには良く分からないことだったけれど、時折軽く啼いてみる。
短い応えのような声に、人はよく笑ってくれた。
子供のような笑顔に、わたしは、何時しか、人が気に入ってしまった。

暫くして、傷が癒えたわたしは、また空を飛べるようになった。
自由な空へ帰ることができる。
けれど、わたしは自らの意思で、人の側を離れなかった。
水や木の実が提供されるからではなく、人を好きになってしまったから。

この頃、人は、いつも難しそうな顔をして、紙とにらめっこをし、
時折溜息をついては額を抱えて涙を零す。
その姿を見て、わたしはとても胸が締め付けられて、痛かった。
わたしは小さな鳥で、わたしの胸もとてもとても小さなものだけれど、
それでも、翼が傷ついたときよりも胸が痛んだ。

人に、また笑ってほしくて、私は始めて歌を歌った。
高く、低く、この人が、元気になるように、また、笑顔を見せてくれるように。
強く、強く、願いを込めて。
わたしの歌声に驚いたのか、人はわたしを振り返った。
泣いていた。
それでも、わたしが歌えば、人は笑顔を返してくれた。

「…おまえは、わたしを励まそうとしてるのか?
傷が癒えても空へ戻ろうともせず。わたしの許へ留まるなど…。」

寂しそうに笑う人。
わたしは、元気付けたくて、その人の周りを飛んだ。
飛びながら、歌った。
いつも紙を持ってやってくる人も来て、驚いていたけれど、
わたしの歌声に、その人も笑ってくれた。

いつしか、わたしは人が紙と向かっている間、歌い続けるようになった。
小さな声で、ゆったりと。
その人の仕事が減ることはなかったけれど、わたしが歌っている間は、
人も作業が捗るようだった。
わたしの歌が、この人の何かを変えられるのだとしたら、そうしたいと思った。

暫くして、その人は夜、わたしに告げた。

「わたしは、行かねばならん。お前を置いていくことは気がかりだが、
家の者に世話は任せてある。心配せず、ここで待っていろ。」

何故だか、わたしは厭な気持ちがして、短く泣いた。

「行きたければ、好きなときに、お前の空に帰るがいい。」

人の言葉は、わたしにとても重たく、寂しく響いた。
ここに居たい。この人の側に居たい。少しでもこの人の癒しになるなら、
ずっとここで、朽ち果てるまで歌を歌いたい。
願い続けてきた想いを込めて、わたしを撫でる手に身を摺り寄せるけれど、想いは伝わらない。
わたしに人の言葉が話せたら。伝えるのに。

『わたしを置いて、行かないで。連れて行って。』

代わりに、啼いてみたけれど、人はわたしの頭を指先で撫でるだけ。
翌朝、人は普段着ない甲冑を着て、部屋を出て行った。
わたしにはなんとなく分かってしまった。これが最期なのだと。

人が居ない部屋。
啼いても、歌っても、もう人の笑顔は見られない。
わたしは羽ばたいた。いつでも開いていた戸から、空へと。


たどり着いた先は、わたしとは無縁の世界。
人の気配を辿って飛んで来てみた場所は、人が無数に倒れていた。
それをみて、わたしはやはり、人は野蛮だと思った。
けれど、無数に倒れる人の中に、わたしの知る人は居なくて、安堵もした。

わたしは気付いてもらえるように、歌いながら飛んだ。
疲れても、声が嗄れても、飛んで、飛んで…。

どれだけ飛んだかは覚えていない。
気がついたら、わたしはぼろぼろで、自慢だった綺麗な翠の羽根も薄汚れ、
歌いすぎた喉はつぶれてしまっていた。
それでも、どうしてもあの人に会いたかった。

その一念が、奇跡を呼んだのかも知れない。
わたしは疲れ果て、とある大きな屋敷に落ちた。
そこで、捜し求めた人の姿を見つけた。

その人は、真っ白な着物を着て、庭に座っていた。
なにか、良くない予感がした。
気付いてほしくて啼こうにも、もう声はでない。
側に行きたくて飛びたくても、羽根は鉛のように重たくて、飛べなかった。

わたしは、這うようにして人に近づく。
ただ一度撫でてもらえたらそれで良い、そう思った。
最期の力を振り絞って、わたしはその人の下へと近づく。

人も、わたしに気付いたようで、
驚いた顔をしたあと、泣き出しそうな顔で笑った。

人は、沢山の人に囲まれていた。
手には、野蛮な道具を手にした人たち。
わたしは理解したけれど、信じたくなくて、必死に声を張る。
せめて最期にあの人に、わたしの歌を聞かせたかった。
否、あの人の名を呼びたかった。

「……み……なり……」

掠れた声、あの人に届いたかどうかは分からない。
幸いにも、人が真っ赤な血で染まる光景は見ずに済んだから。
どうやらわたしの方が先に、命を燃やし尽くしたらしかった。




目が覚めて、己が泣いていることに驚いた。
政宗は起き上がって、掛け布を掴む。
同衾していたはずの温もりが無い事を知って、不安になる。
無意識に名を呼ぼうとして、はっと喉に手をやる。
何故か鼓動が高鳴り、涙は止まらなかった。

「…どうした政宗。何を泣いている?」

声をするほうを見やれば、朝日の中、逆光に立つその姿は良く見えない。

「……三成……」

自身の声が出ることに安堵し、そしてその次に、政宗は起き上がって、
窓際に座る三成を抱きしめた。

「政宗?」

普段はしない行動に、三成がいぶかしんでいるのが分かる。
けれど、政宗は未だ夢の続きのような気がして、心が休まらない。

「…わしは、鳥じゃった…」
「…………夢、の話か?」

無言で頷けば、三成の細い指が、政宗のうなじをかきあげ、額に唇を落とした。

「厭な夢だったようだな。うなされていた。」
「三成、わしは…」
「何も言うな。そんな夢、忘れてしまえ。」

言葉はいつも通り厳しいが、その声音はとても優しい。
政宗は、夢の中、三成に撫でられたことを思い出す。
もしかすると、魘されている政宗を撫でてくれていたのかも知れない。

「…三成…どこへも行くな。行くなら、わしも連れて行け。」
「一体どうしたんだ、今日は。」
「もう、あんなもどかしい想いは沢山じゃ…」

何時になく、三成に抱きつき、体を摺り寄せる政宗に、
三成も愛しさが募る。

「夢など、忘れてしまえ。わたしは、お前の側に、居るだろう?」

優しい言葉と口付けが、無性に切なくて、政宗は泣きやむことが出来なかった。

あれは夢なのだろうか。
近々現実になりはしないだろうか。
明け方の夢は正夢になるという―――。

政宗は、二、三度頭を振り、三成が自身を置いて行かないように、きつくその体を抱きしめた。

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