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藍は青より出でて、青より碧し。
突き抜けるような青空。
その中に、不釣合いに立ち上る硝煙。
キッドは軽く漆黒のスーツの叩き、土煙を払う。
手にした武器姉妹の武器化を解かせ、当然のように左右に控えさせる。
「なぁキッドぉ。良かったのか?こんなにしちゃって。」
「そうだぞぉ!キッドくん、悪い子はおしおきされちゃうんだよ。」
テンガロンハットが似合う、色合いの違う金髪の姉妹は、
口々にキッドに意見する。
それもそのはず。
周囲には硝煙が立ち込め、破壊の限りを尽くした爪痕が残る。
デス・ルームを破壊し、
父である死神と、デスサイズスを退けたばかりなのだ。
「戯け。奴らが無駄な抵抗をするからだ。」
フン、と鼻を鳴らし、キッドは唯一遺されていた玉座のような、
豪奢な椅子に座る。
足を組み、両肘を肘掛に預け、さらに右腕で己の顎を支えた。
「俺は俺の望む世界を手に入れるまでだ。
気に入らないものは排除する。」
「キッドの望む世界ってなんだよ?」
「シンメトリーだよねっ!ね!キッドくん!!」
きゃっきゃと飛び跳ねるように、玉座の周りを飛び跳ねる、
愛くるしい二丁魔拳銃の片割れ。
「パティ、静かにしろ。」
「キッド君のケチー」
ぷぅっと頬を膨らませ、キッドに抗議するが、本人は、耳に指をあて、
五月蝿そうに眉間に皺を寄せるだけだ。
「俺の望む世界。シンメトリーである事も理想だが、な。でも、違う。」
「なんだよ?もったいぶらずに言えって。」
長身のリズが、座るキッドを覗き込むようにして問う。
キッドは瞑っていた瞳を片方だけうっすらと開けて、リズを見上げる。
半眼から覗く金の色合いは深く、どこまでも吸い込まれていきそうだ。
「知りたいか?」
キッドの問いに、姉妹はそろって頷いた。
「父上よりも、秀でている、という証明が出来る世界、
それが、俺の望む世界だ。」
「はぁ?」
リズが、意味不明だ、と聞き返す。
それに不敵に笑って返すキッド。
「言うだろう?藍は、青より出でて、青より碧し…と。」
「よくわっかんなーい。」
「分からなくても良い。ただ、俺は父上を越えたいだけだ。」
「そんなもんかねー?」
「お前達には分かるまい。
真綿に包まれるように、過保護なまでに育てられて。
"守る"という大義名分の名の下に、真実から遠ざけられる、この疎外感をな。」
右手で己の唇を撫でる。その指先には、死神の血がついていた。
キッドの赤い舌が、その指をぺろりと舐める。
そして、満足気に弧を描く唇。
相変らず半眼で、金の双眸は、砂漠の夜明けを思わせる、深い色。
「もう、守られる愛は要らない。
俺が守ってあげるよ、父上…。壊しそうなほどの愛で、ね。」
キッドの呟きは、瓦礫の山に掠れて響いた。
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