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一方通行
「あの…ソウルくん…もし良かったら、あたしのパートナーになってください!」
もうこれで何度目の呼び出しか。
ソウルは軽く溜息をついた。
デスサイズになってから、確かに申し込みレターやら、呼び出しが多い。
でもそれが一体なんだと言うのだろう。
どいつもコイツも、履き違えている。
「……で?俺がパートナーになったとして、アンタどーすんの?」
「…え?」
「俺はもう、デスサイズになった。だけどアンタは?デスサイズ作ったのか?
デスサイズ一つ作れてないあんたに、俺が鍛えられるとは思えない。」
「ソウルくん…」
ゆるくウェーブを描く目の前の少女の髪が、風になびいた。
恥ずかしさと高揚からか、キラキラと輝いていた瞳に、じんわりと水分がたまっていくのが分かった。
頬を染め、興奮したような表情から、凍りついたような顔になる。
それでも、ソウルは言葉を止めなかった。
最近の呼び出しの多さに随分と腹が立っていたのも事実だ。
目の前の名も知らない少女には悪いが、ここは一つ、犠牲になってもらおうと心に決めた。
キツク拒否すれば、明日には死武専中に噂が広まって、
それこそ背びれ尾ひれが付きまくった状態で、鬼畜生呼ばわりされるかもしれない。
女とはなんて厄介な生き物なんだ、と思う。
だが、それでも良い。いちいち断らずに済む分、気が楽だ。
「何を誤解してんのか知らねーケドよ。
俺等武器ってのは、デスサイズ目指してて、それって死神様やキッドの武器になるって事だろ。
最終的に俺のパートナーになる資格があるのは、死神様とキッドだけだ。」
「……っ!!!」
「まぁ今はデスサイズになったばっかだし、力不足も認める。
けど、デスサイズ一つ作ってない奴にパートナー申し込まれても迷惑だ。
お前に、デスサイズになった後の俺を鍛え上げるだけの腕があんのかよ?」
「ひど……っ」
少女は口元を覆って、何とかそれだけ言葉を紡ぐ。
そして踵を返し、振り返ることなく走り去っていった。
コレで良い。
ソウルはそう思って空を見上げる。
「キッド…お前……今どこにいんだよ……」
小さく呟いた言葉は、身を切られるようにとても切実で。
ソウルは唇をかみ締めた。
デスサイズになった。もう、キッドの足手まといにはならない。
今度は、自らの手でキッドを助けるのだ。
キッドが死武専に編入した理由を、ソウルは知っている。
シュタイン博士に殺されそうになったと感じたキッドが助けに入るため、
編入を申し出た事。
結局、キッドは来なかったし、シュタイン博士も"課外授業"という事で本気ではなかったが。
本当ならあの場で一度助けられている。
編入初日だって、かなりの手加減をされていた。
いくらデスサイズになったとは言え、
キッドがあの魔銃姉妹以外を武器に選ぶことなど、ないだろう。
それが分かっていても尚、ソウルはキッドの武器になりたかった。
「俺はデスサイズになった。死神様の武器に。
今度は、俺が助けに行く。待ってろ、キッド。そんで、ぜってぇ、俺を使わせてやるからな…。」
ソウルは拳を握り締め、ゆっくりとその場を後にした。
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