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「乾燥しているせいか、空が澄んで見えるな。」
「まー、ここなら流石に綺麗に見られるんじゃね?」
二人は、ベルゼブブで砂漠の中の崖上に立っていた。
今日は七夕。織姫と彦星が年に一度、天の川越しに出会う日。
なんとなく浪漫を感じたのだ。
まぁ逢瀬が一年に一回だけになってしまった理由に、ソウルは軽く溜め息をつくが。
この際どうでも良い。隣にはキッドがいる、それだけで十分だ。
星を見上げるキッドの瞳にも沢山の星が映った。
今その場よりも、キッドの瞳の中の景色に同一してしまいたい――。
一種病んだような思いが頭を過ぎるが、気にせずその肩を抱き寄せた。
「奴等は年に一度しかあえないのに、他人の願いまでかなえてやるとは。
随分と殊勝というか、暇なんだな。」
「…好きでかなえてる訳じゃねーとは思うけど…。
キッドの言葉に、ソウルが頷く。
しかし、それはさしたことでもないように、キッドはゆっくりとその腕を宙に伸ばした。
「お前等の願い、俺が一時かなえてやろう。」
言うなり、きれいに見る事が出来てた天の川に雲が掛かる。
雨雲とまではいかないが、薄い雲がどこからとも無く湧き上がり、気づけば川を覆い、
わずかな月光だけを柔らかく残すだけとなっていた。
「お前、天の川見るのにどれだけの男女が景色の良いとこ行ってると…」
「見世物ではない。」
「…は?」
「奴等の逢瀬は奴等のものだろう。俺達が見てよいものではない。」
言うなり、キッドはソウルに軽く口付けた。
「見せたいか?」
「…えっ…は…?」
突然のキッドの行動にソウルはついていけない。
ただ問われ、疑問で返すと、小さく笑って答えた。
「俺は、見せたくないがな。
ソウルとこうしているところ。」
その言葉に得心の言ったソウルは、にっこりと笑ってキッドの肩を抱きしめた。
今宵限りの恋人達の逢瀬、少しは二人きりの時間を取れただろうか。
ソウルは今までに無く、キッドを抱きしめながらそんな事を考えた。
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