久しぶりに、戦国無双、『煙草』で参話いってみたいと思います。
三政、兼政、幸政で順番に。
いや、当サイト、政アイドルを目指している割に、
兼続との絡みが異常に少ないことに気づきました。
そんなこんなで、まずは三政から。
『煙草』 大丈夫な方は、『つづき』よりどうぞ。
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煙草(三政)
室内をたゆたう、薄紫の煙。
ゆったりと空気を流れ、そしてふっと消えてゆく。
その繰り返しを、政宗は飽きもせずに見ていた。
「…吸ってみるか?」
無言で、けれど興味深そうに煙の先を目で追う政宗に、三成は何時になく優しい声で問いかけた。
まるで少年のような仕草に、三成の心が解れたせいもあった。
ここのところ激務続きで、政宗に構ってやる暇も無かった。
こうして煙草を吸っている時くらいは、政宗を甘やかしてやろう、と三成は思ったのだが。
三成の言葉の意味が分からず、政宗はきょとんと無警戒に三成を見つめ返すだけだ。
この、時折見せる、年相応の反応が、三成は気に入ってる。
「煙草、やってみるといい。」
三成は、火鉢の傍で、煙管に詰めていた煙草の葉を、淵で叩いて落とした。
カン!という子気味良い音と供に、灰が火鉢に落ち、政宗の意識を向けさせた。
新しい葉を詰めて、政宗に渡す。
とりあえず、渡されるままに煙管を受け取った政宗は困惑した。
三成はいとも容易く煙草を吸うが、政宗は発火後、どうして良いか分からずに幾度か失敗していた。
もちろん、こんな事は孫市には伝えていない。
いくらなんでも格好がつかない、と考えたからだ。
煙管を持ち、じっと見つめ、動こうとしない政宗に、三成は「どうした?」と問いかけた。
困ったように小首を傾げて煙管を掲げる政宗に、益々疑問符が浮かぶ。
数瞬躊躇った後、政宗はばつ悪そうに、三成に煙管を返した。
「…やりかたが、わからぬ。」
「…やりかた?」
それきり、頬を染めたままふいっと顔を逸らした政宗が愛おしく、
三成は煙管を受け取ると、火をつけて、軽く吸い込んだ。
たちまち、室内に煙草特有の香りが広がる。
ふっと軽く吐いて、薄紫の煙を室内に残すと、三成は再度、煙草を深く吸い込んだ。
「政宗…」
「…なんじゃ…笑いたければ…っ!」
笑えば良い、と続けようとした言葉は、三成の唇に吸い込まれた。
振り返り様、三成によって唇を奪われたのだ。
そして、口内には苦いような、甘いような、煙と三成の熱い舌が入り込んでくる。
ぬるつくばかりの感触と、少し苦めの煙の味。
一度に襲われる複数の感覚に、政宗は「抵抗する」という言葉を忘れて、
甘んじて受けてしまっていた。
「…っ…どうだ?美味いか?」
白皙の美貌が、意地悪く笑いながら、政宗の、鳶色の隻眼を覗きこんだ。
唇から、いつも室内で香る煙草のにおいよりももっと甘い呼気が漏れるようで、
政宗は頭から指先まで真っ赤に染まった。
そんな、初心な反応に三成は気を良くし、再び煙管から煙草の葉を抜くと、
懐紙を取り出して、煙管を拭い始めた。
そして、言葉を紡ぐことが出来ずに沈黙している政宗に、無言でその煙管を渡したのだ。
「お前にやろう。恋しくなったら、思い出すと良い。
ここに居る間は、それのやり方を教えてやろう。丁寧に、優しく、な。」
含みを持たせた三成の言葉に、政宗は何かを言おうとパクパクと口を動かし、
やがて思案したあと、口を閉ざしてしまった。
代わりに頬はこれ以上ない、と言うほど朱に染まっていた。
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