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死の神
俺を『断片』と呼ぶそれの中に取り込まれて、
億千の思考が去来した。
そして、その先に見出したものが、シンメトリーを超える―――
無。
左右対称でない気になるのだ。
全てがなくなれば、気にもならない。
永遠の静寂。
暗黒よりも昏い虚無。
見たくない未来があった。
それを見なくても済むのだ。
この先に待っているものが、無、しか無いのであれば。
栗毛の少女と銀髪の少年が仲良く子を成していく未来。
そんなもの、刈取ってしまえば良い。
「森羅万象に、死を。
―――それが、死神の役割だ…」
俺は、俺自身に言い聞かせるように目を閉じた。
都合の悪い結末は見たくは無いから。
俺の体に流れ込み、浸透してゆく『無』へ誘う強大な力。
逃げるように、それに身を委ねた。
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