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やきもち?
ほぼ、負け戦だと思われていた上田城の戦い。
そんな中、駆けつけた仲間。
幸村は心強さも感じながら兵を進めた。
そして、城下に火を放ったくのいちと合流する。
「良くやってくれた。怪我はないか?」
「えへへ~だぁいじょうぶです!ちょっとやけどしちゃったケド。」
「そうか…すまない。」
背中を合わせて、お互いを気遣う会話をしながら戦う幸村とくのいち。
そんな姿を遠くから認めた政宗は、具足をがちゃがちゃさせながら、その二人に近づいてゆく。
「あっおい政宗!どこ行くんだよ?」
「五月蝿いわっ!孫市、お前は一人でも多くの武将をやっておけ。」
むすっとした表情でずんずん進んでいく政宗の背中を見つめながら、
孫市は微苦笑をもらす。
「まったく、うちの竜は可愛いったらないよねぇ。
女だったら放っておかないのに。」
目の前に立ちはだかる武将に銃口を向けながら、孫市はやれやれと首をすくめた。
「幸村ぁ!」
「政宗殿!いかがされました?」
稲姫と対峙しているその間に、無遠慮に割って入ってくる政宗。
幸村は驚きを隠せない。
「なっ?!一対一の勝負に水を差して、もののふとして、恥ずかしくないのですかっ?!」
「五月蝿い!黙っておれ!」
稲の抗議を一喝し、政宗は強烈な一撃で稲を撃破した。
「政宗殿っ?!」
只ならぬ政宗の雰囲気に、幸村はただおろおろと政宗を見やる。
そんななか、政宗は右籠手の中指部分を唇で食み、ぐっと手を引き抜く。
そこには、白磁に勝るとも劣らない、滑らかな白い手。
その手に見とれていると、ぐっと幸村の前に手が差し出された。
「……政宗、殿?」
「…手。」
「…手…ですね…。手がいかがされました…?」
「だからじゃな!手!」
頬をぷくっと膨らませて、政宗はぐっと手を差し出すだけだ。
幸村は良く分からず、けれどもまじまじとその手を見つめた。
すると、その手にはうっすらと痣が出来ていた。
「政宗殿、お怪我を…?」
うっと詰まったように、政宗はふいっと顔を逸らした。
「こうしてはおれない!すぐに城に戻って手当てしなければっ!!」
「いや、わしは大丈夫じゃ…っ!」
手の痣に気づくなり、幸村はがばっと政宗を横抱きに抱え、一目散に城に向かって駆け出した。
「えっ?あ、おい!幸村!この喧嘩はどうすんだい?!」
慶次が慌てて声を掛けるが、幸村は答えることなく、駆け抜ける。
政宗を抱えていてもお構いなし。
烈風のごとく城内へ引き返す。
「もしもお体に痕が残ったりしたら一大事!
政宗殿に何かあれば、幸村は生きていけませぬ!」
「ゆ…幸村…」
横抱きに抱きかかえながら、政宗は頬を染めてうっとりと幸村を見上げていた。
『…もう勝手にしてくれ…』
兼続、慶次、孫市は胸中呆れたように呟き、とにかく目の前の武将を倒すことに専念した。
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