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嫁、夜這いす。
政宗は今の状況を正確に把握できていなかった。
その夜は、夕方の幸村とのやり取りを忘れてしまいたくて、寝る前に酒を飲んだ。
少々深酒してしまったという自覚はあった。
けれど、早めに床に着いてしまえば、明日には酒気が抜けるだろう、と
いつもより早い時間に布団に潜り込んだのだ。
酒に弱いのに、良く飲んでしまうのは悪い癖だ。
「…ん…」
夜中、どうも体が重たく、目が覚めた。
ずしりと何かが圧し掛かるような重みは、息苦しさすら感じる程で。
ゆっくりと瞼を明けると、現実と結び付け難い光景が目の前に広がった。
「…ゆき…む……ら……?」
声が掠れている。喉が渇いているせいかも知れない。
水が欲しいと思う前に、ひやりとした手が政宗の前髪をかきあげて額に触れた。
酒のせいで火照りが残った体には心地よいのだが…。
何故幸村が目の前に?
しかも、何故政宗の寝所にいるのか?
頭の片隅に様々な思考が過ぎるが、いまいち目覚めが悪く、上手く結論までたどり着かない。
「みず…」
とりあえずの欲求を言葉に乗せると、目の前の男が柔らかく笑った後、
政宗の唇に温かい何かが押し付けられた。
咥内から喉を通る冷たい感覚が、口移しで水を飲まされているのだと理解させ、
同時に政宗の思考もはっきりしてきた。
「…ぅっ……んぅ?!」
思考がはっきりすると同時に、覆いかぶさる黒い影…もとい、真田幸村を押し返す。
急に政宗が暴れたためか、幸村もすんなり体を浮かせる。
「んな…?!…なっ…幸村?!」
「はい、なんでしょう政宗殿?」
「なぜここに…」
「夜這いにきました。」
さわやかな笑顔と供に告げられる言葉に、政宗は衝撃で二の句が告げられない。
硬直している間に、幸村は政宗の上掛けを剥いで、襟を寛げていく。
露わになる、夜目にも白いと分かる首筋に吸い付けば、政宗の体が反射的に震えた。
「ゆき…っ…おまえ……何…?!」
もはや混乱の極みに居る政宗に、きちんとした言葉を紡ぐことが出来なかった。
ただ幸村に成されるがまま、『抵抗』という言葉も思いつかない。
「大丈夫ですよ、政宗殿。これからの嫁は、閨事も率先するくらいでないと…。
特に、恥ずかしがり屋で照れ屋な政宗殿には、押しまくるくらいの方が良いかと思いまして。」
「!?!?!?!?!?!?!」
目の前の幸村が何を喋っているのか、もはや政宗には理解不能だった。
とにかく、今の状況が非常に不味いという事は理解できるのだが、
いかんせん酒の抜けきっていない体には力が入らない。
幸村の手と、唇によってどんどん暴かれる体は、自身の体でないほど、情けなく快楽に震えた。
「…っやぁ……止せ……」
「暴れないでください、政宗殿…大丈夫ですから。」
宥めすかして、政宗の体のいたるところに所有印をつける幸村。
その刺激に敏感に反応を返す政宗を見つめ、満足そうに微笑んだ。
「やはり、思ったとおり、政宗殿は愛される事が向いておられるようですね。」
「ちが…っ……」
快楽に従順な体で何を言っても無駄なのだが、政宗はその隻眼に涙をためて、
幸村から与えられる快楽を否定しようとした。
「政宗殿…大丈夫です。全てわたしに任せてください。」
政宗を見つめ、にっこりと笑う幸村はいつも通りの柔和な顔なのに、
政宗はただただ恐怖に顔を引きつらせてその顔を見上げた。
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