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日々の徒然や妄想など
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なんと調理中に火傷を負いまして。
その前はサックリと指を切りまして。
よく言えばドジっ娘属性、悪く言えば不器用。そんな雲です。

火傷は三箇所。いずれも水ぶくれが出来ています。。。orz

さて、幸政で、嫁シリーズの続きです。

幸村が壊れ始めます。
大丈夫な方は「つづき」よりどうぞ。


*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*

その嫁、返品不可。


政宗は、自室に戻ると、家人に茶と茶菓子の用意を命じた。
招かれざる客とは言えおそらくやってきたのは真田幸村だろう。
何故だかいたく気に入られ、尻尾を振る犬のようにまとわりついてくる。
真田幸村本人に自覚は無いようだが、
どうやら好かれている、という自覚が、政宗にはある。

(…兼続などは、『山犬』だの『不義』だの、
わしを毛嫌いしておるが、なぜ奴はわしを好いておるのか。)

首を傾げてみるも、政宗の性格から言って、
誰かに好かれるように振舞うことなどしたことが無い。
ましてや相手は真田幸村。
大名である政宗が、媚を売る必要も無いのだから。

「まぁ良い。適当にもてなして追い返すまでじゃ。」

出掛けたときの着物のまま、政宗は上座に座ると、煙草盆を引き寄せた。
すると、遠くから賑やかな音や声が響き、
それがだんだんと自室に近づいてくる。

そして―――

「政宗殿っ!!お久しゅうございます!」

桟が壊れるのではないか、という勢いで引かれた障子戸の向こう側に、
笑顔全開の真田幸村が立っていた。

政宗は暫し呆然と幸村を見つめ、
思わず口をあけてしまっていた。

「…政宗殿?」
「ゆ…ゆき…」
「はい」

政宗の僅かな言葉にも反応し、幸村はにっこりと笑む。
それを見て、政宗の頭もだんだんと働き始めた。

「幸村ー!!!貴様……っ何を勝手に入ってきておるんじゃ!!!!」

普通なら、門で門番が用件を聞き、政宗に取り次ぐ筈が。
幸村の背後で、家来の一人が申し訳なさそうに立っている。

「どうしても政宗殿に直接お会いしてお話したき用件でしたので、
通していただきました。」

すこぶるさわやかな笑顔で告げる幸村だが、政宗の怒りは収まらない。

「礼儀をわきまえよ、馬鹿めっ!!」
「あ、申し訳ありません…心ばかりが逸ってしまい、礼節をわきまえず…」
「今更反省しても遅いわ馬鹿め!お前はほんっとうに…馬鹿じゃな!」

政宗の叱責に対し、急にしょげ返る幸村を見ていると、
何だか政宗も申し訳なく思い、ほだされてしまう。
深くひとつ、溜息を吐くと、政宗は項垂れる幸村に座を勧めた。

「まぁ良いわ。して、用件とはなんじゃ。」

申してみよ、と続け、自身はお気に入りの煙管に煙草の葉を詰める。
幸村が嬉々として話し始めるのを興味なさ気に聞き流し、
火をつける。
家人が茶と茶菓子を持って来たら、適当に話を切り上げて追い返そう。
そう思案していると、とんでもない言葉が耳に入る。

「―――という訳で、不肖・真田源次郎幸村。
本日、政宗殿の元に輿入れに参った次第です!」
「――っ?!?!?!?!?!げほっ……げほっ…ごほっ!」
「政宗殿、きっと煙草は体に良く無いですよ。
そんなに咽ていらっしゃいますし…。夫の健康管理も妻の役割の一つですね!
幸村がお側に居る限り、政宗殿の健康管理もしっかりさせていただきますので。」

幸村の言葉に驚き、吸っていた煙草の煙に咽せて苦しい。
何とか落ち着こうとするのだが、次から次へと飛び出してくる幸村の言葉に、
政宗の思考回路が追いついてこない。

忙しげに、咽る政宗の背を撫でる幸村の手を振り払おうとするのだが、
体格の良い幸村の手が、政宗から離れることはない。
咽たことによる息苦しさに涙が浮かび、何とか幸村の腕を払いたいが、上手く行かない。

「っ…はっ…ゆき……おまえ……今…なんと…?」
「ですから、本日からわたしは政宗殿の妻として、健康管理もしっかりと…」
「まてぃ。」

ようやく呼吸が整った政宗が幸村の腕を掴む。

「誰が誰の妻じゃ?!こんなでかい男を嫁にするじゃと?
馬鹿も休み休み申せ!」
「わたしは本気ですよ政宗殿。残念ながら、今は敵同士ですが、
婚姻によって敵が結ばれることもあります。」
「それは、おなごが嫁ぐからであって、お前が伊達に嫁いでどうする!」
「わたしは伊達に嫁ぐのではなく、政宗殿に嫁ぐのです。」
「…政宗様、真田殿が嫁いでくる事自体には触れられないのですか?」

詰め寄る幸村と、逃げる政宗を見つけ、ようやく追いついた小十郎が、
冷静な指摘をするが、半ば混乱の極みにいる政宗に、その言葉が届くことはなかった。

「政宗殿のお食事は、わたしがご用意しますね!御厨をお借りいたします。」

信州の美味しい郷土料理を作るのだ、と言い、政宗の言い分など一切聞かない幸村は、
廊下を歩いていた家人を捕まえ、勝手に御厨へと行ってしまった。

半ば呆然とその場に残された政宗は、嵐のような惨状にふつふつと怒りが込みあがって、
静かな、けれども怒気を十分に孕んだ声で、小十郎に命じるのだ。

「小十郎、紙と筆を持て。昌幸殿に文を出す。」
「はい、政宗様。」

後日、文の返事が返ってくるのだが、その文面に政宗は胃痛を覚えるのだった。


" 伊達 政宗様

(中略)

何分、言い出したら聞かぬ倅故、願わくば、その寛大なお心によって、
幸村の好きにさせていただけはしませぬか。
あれでも多少は分別のつく大人、冷静になるまでどうか、よろしくお願い致したく候――"

「つまり、返品不可って事ですね。」
「…………頭が痛い………」

額を押える政宗に、小十郎は殿医を呼んで、良く効く頭痛薬を配合させた。

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